調査結果

優れたリーダーの特性とその国際比較

「組織とリーダーに関するグローバル価値観調査2015」より

2015年7月 8日

「優れたリーダー」とはどのような特性を備えた人ですか? ――そう聞かれたら皆さんはどう答えるでしょうか。またその答えは国によってどう違うでしょうか。

コーチング研究所では、世界15ヵ国(地域)の企業に勤める非管理職の男女1.500人(各国100人)を対象に、「組織とリーダーに関するグローバル価値観調査2015」(※1)を実施しました。「人生で大事にしている価値」「労働観」「理想の職場像」など様々な価値観を扱った調査になりますが、そのひとつに「優れたリーダーの特性」を問う質問を用意しました。

今回調査するにあたり、当研究所の800社を超える企業のリーダーシップや組織開発に関するこれまでの研究結果を基に、リーダーシップの要素を18項目に集約しました。調査では「組織において、優れたリーダーとはどのような人だと思うか」を聞き、18項目から特に重要だと思うものを6つ選んでもらいました。選択率の高かった項目が「優れたリーダーの特性」ということになります。各国の選択率を算出し、選択率の高い順に並べたのが図1です。

図1 人々が考える優れたリーダーの特性 -国別ランキング-

Global
Australia
Brazil
China
Hong Kong
France
Germany
India
Indonesia
Japan
Russia
Singapore
Sweden
Thailand
UK
US
責任感が強い 1 3 1 1 1 1 1 9 1 1 1 6 2 1 4 2
人を鼓舞する 2 1 3 8 8 3 2 2 2 15 5 1 1 12 1 1
人の話を聞く 3 1 6 2 2 2 5 3 10 2 4 3 5 3 2 3
自信がある 4 4 4 6 10 9 15 1 5 11 2 1 10 6 3 4
チーム力を高める 5 8 5 3 7 4 3 5 7 10 2 6 6 16 8 5
人を育成する 6 6 8 7 6 6 9 13 15 4 8 8 7 10 4 9
決断力がある 7 10 11 4 9 16 7 14 6 3 11 5 8 2 6 13
謙虚である 8 11 2 10 11 5 16 7 3 8 17 11 3 8 10 6
指示が明確である 9 6 16 9 4 8 4 15 13 6 8 9 4 14 6 11
戦略的である 10 9 9 5 3 14 6 10 8 13 6 4 16 6 11 7
ビジョンを示す 11 5 13 13 5 15 13 7 14 7 10 10 15 11 13 12
常に学んでいる 12 13 7 16 18 13 8 10 8 5 12 12 11 4 9 10
楽観的である 13 12 12 13 16 10 9 6 3 16 13 12 9 9 12 8
活力がある 14 14 18 11 17 7 12 4 12 12 7 17 12 5 17 15
発想が豊かである 15 17 14 18 15 12 17 12 11 9 14 16 12 15 16 16
多様性を重んじる 16 15 9 15 14 17 14 16 16 14 18 14 12 13 14 14
権限委譲できる 17 16 15 12 12 11 9 18 18 18 16 15 16 17 15 16
変化を起こす 18 18 17 17 13 18 18 17 17 16 15 18 18 18 17 18

※数値は当該項目のその国における順位。Globalは全回答者1,500人の集計結果に基づく順位
コーチング研究所調査 2015年

調査を行った世界15ヵ国(地域)全体で見ると、トップ3は「責任感が強い」「人を鼓舞する」「人の話を聞く」でした。この3項目が世界的に見てランキングの上位に来ることは、さほど違和感のない結果のように思えますが、意外だったのはトップ3項目が多くの国で同じく上位を占めたことです。オーストラリア、フランス、アメリカではトップ3が一致(順位違い)、残り12ヶ国に関しても11ヵ国で上位2項目が15ヵ国(地域)全体のトップ3のいずれかに一致しました。

当研究所の仮説は「優れたリーダーの特性は国によって異なる」というものでした。「優れたリーダー」の基準は、その国の歴史や文化、政治・経済の現状や社会環境などに大いに影響されると考えられるからです。それに対し図1の結果は、優れたリーダーの特性は国が異なってもかなり共通しているという、仮説とは逆の結果になりました。

しかし、この結果は「優れたリーダーとはどのような人だと思いますか」と聞いた、人々が考える優れたリーダーの理想像です。これに対して、実際にはどのようなリーダーを優れたリーダーと認めているのでしょうか。

調査では、回答者に自身が所属する組織のリーダーを18項目別に評価してもらい(「あなたの会社のリーダーは、あなたからどう見えていますか」)、その上で最後にリーダーとしての総合評価をしてもらいました。この実際の評価データを使って、18項目がそれぞれ総合的なリーダー評価にどの程度影響するかを、統計解析の手法を用いて算出しました。影響度の高かった項目は、「優れたリーダーが実際に備えている特性」と解釈することが出来ます。18項目を国別に、影響度の高い順に並べたのが図2です。

図2 優れたリーダーが実際に備えている特性 -国別ランキング-

Global
Australia
Brazil
China
Hong Kong
France
Germany
India
Indonesia
Japan
Russia
Singapore
Sweden
Thailand
UK
US
権限委譲できる 1 1 1 1 1 8 7 6 7 5 4 1 1 8 3 8
責任感が強い 2 15 5 8 6 15 11 1 6 9 1 17 12 9 4 12
多様性を重んじる 3 3 12 12 15 9 2 2 1 10 2 6 5 5 1 1
戦略的である 4 9 2 17 11 14 9 5 2 1 5 12 8 2 5 11
指示が明確である 5 11 3 10 5 3 14 3 3 6 12 3 6 12 17 4
謙虚である 6 2 6 5 4 7 1 13 4 3 15 4 3 7 2 7
チーム力を高める 7 6 16 7 8 4 3 4 12 11 14 10 9 4 16 15
人の話を聞く 8 18 10 4 3 11 8 8 13 4 8 18 14 10 6 2
発想が豊かである 9 14 13 2 16 1 18 7 11 2 3 13 18 18 12 3
変化を起こす 10 13 9 13 2 5 16 12 17 13 9 7 4 13 13 16
常に学んでいる 11 16 15 6 14 10 4 10 15 14 16 5 7 16 7 6
人を育成する 12 6 18 9 12 13 5 17 5 7 7 8 10 6 9 5
決断力がある 13 10 14 18 9 12 6 14 8 8 10 1 17 11 10 9
楽観的である 14 4 7 11 10 17 10 9 14 15 11 14 13 15 15 10
ビジョンを示す 15 12 17 3 13 2 17 18 10 16 17 11 2 17 18 14
活力がある 16 17 4 16 17 16 12 11 18 17 18 14 16 3 14 18
自信がある 17 4 8 14 18 18 13 15 9 18 6 14 15 14 11 13
人を鼓舞する 18 6 11 15 7 6 15 16 16 12 13 8 10 1 8 17

※数値は当該項目のその国における順位。Globalは全回答者1,500人の解析結果に基づく順位
コーチング研究所調査 2015年

この方法で得られた優れたリーダーが実施に備えている特性トップ3は、15ヵ国(地域)全体では「権限委譲できる」「責任感が強い」「多様性を重んじる」でした。「責任感が強い」は「人々が考える優れたリーダーの特性」でもトップ3に入っていましたが、「権限委譲できる」と「多様性を重んじる」は下位の項目で今回とは異なる結果となりました。

また、トップ3の項目が15ヵ国(地域)と一致した国はありませんでした。2項目共通していたのは4ヵ国、1項目共通していたのは8ヵ国で、フランス、日本、タイの3ヵ国はトップ3が全く一致しませんでした。

これらの結果は何を意味するのでしょうか。

ひとつには、人々が優れたリーダーと聞いて思い浮かべる特性と、実際に優れたリーダーかどうかを判断している特性は異なるということです。人はリーダーについて語るとき「権限委譲する」ことや「多様性を重んじる」ことをさほど口にしませんが、リーダーがそれらの行動をおこなっているかどうかを無意識に見ている、と言えます。

ふたつ目は、優れたリーダが備えている特性は、国によって必ずしも同じではないということです。「権限委譲できる」ことや「多様性を重んじる」ことが求められる国は多いわけですが、日本のように「戦略的である」ことや「謙虚である」ことのほうがより重要な国もあります。国民性や価値観に根差した、あるいはその時々の社会・経済環境を背景にした「その国特有の効果的なリーダーシップ」があると考えられます。

※1
「組織とリーダーに関するグローバル価値観調査2015」
調査対象:15ヵ国(地域)1,500人(各国100人),企業に勤める非管理職の25~39歳の男女
調査期間:2015年4月
調査方法:インターネット

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